イベント報告

【開催レポート】 岩井吉彌先生『「森のなかに未来を見る」シリーズ①ー 山村に住む、ある森林学者が考えたこと 』

◎山の手入れができていないと、洪水が起こりやすい
我々人間社会は森からいろいろな恩恵を受けています。最近、私が非常に懸念するのは、日本のあちこちで洪水が起こり、川の氾濫が頻発していることです。もちろん、環境の変化が大きな原因だと思いますけれども、それに付け加えたいのが山の荒廃です。森が健全であれば、土砂が流れ出るのを防ぎ、緑のダムの機能を果たすわけですけれども、今、森が荒れてしまっている。

例えばスギやヒノキの林は、日本の森林の約40%を占め、比較的人里に近いところに植林されているのですが、植えっ放しにしておくと、どんどん密になって、葉っぱ同士が重なってくる。そうすると、日光が入らなくなって、草も生えてこない。
雨が降っても、草があると、根っこが張っているから土壌が流れにくいわけですが、草がないと表土がどんどん流れてしまう。しかも、真っ暗なところには動物も住みにくい。例えば、ミミズがいなくなると、土壌の中の空隙が少なくなって、雨水が吸収されずに谷川に流れていく。同時に土砂が一緒に流れるから、過去と同じ雨量でも、河川に出てくる水量はものすごく水位が高くなって、簡単に洪水になるわけです。

密になった山の豪雨の跡に行ってみると、木の根っこがいっぱい表に出てきている。それだけ下流に土砂が流れてしまっている。5年ほど前でしたか、嵐山の料理旅館が水浸しになった。あの川の上流に私の山があって、そこからどんどん土砂が流れ込んで渡月橋あたりに堆積する。川底が上がってくるわけです。大きな石は流れずに途中で止まって、そこに砂利などがどんどんたまる。あのあたりは今も川底の浚渫(しゅんせつ)工事をやっています。
京都市に流れている鴨川とか桂川の上流は、全部森林地帯です。山が荒れると、鴨川の河床も、桂川の河床もどんどん上がって、洪水の危険度はどんどん上がってくる。これは京都市だけではなく、日本全国で起こっているゆゆしき問題です。

こうなるのは、山の手入れができていないからです。間伐をしてやると、葉っぱの間から日光が入ってくる。日光が入ると、下層植生して、草や小さい木がいっぱい生えてきて、土壌が流れないように根っこで縛りつけるわけですが、こういう手入れが、京都の山だけでなく、日本全体ができていない。
これは、山林所有者が木材生産をする気がなくなってきたからです。今から40年か50年前にスギの木を植えた時は、まだ林業の採算が成り立つと思って植林し、手入れもある程度してきたのが、この20~30年ぐらい前から、こんな手入れをしてもあかんわという状況になってきた。


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